大判例

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岡山地方裁判所 平成3年(行ウ)5号 判決

原告

山縣壽雄(X)

右訴訟代理人弁護士

水谷賢

右訴訟復代理人弁護士

大土弘

被告

(岡山市選挙管理委員会事務局長) 井本勇(Y1)

岡山市(Y2)

右代表者市長

安宅敬祐

被告ら訴訟代理人弁護士

服部忠文

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本案前の争点(一)について

地方自治法二四二条の二第一項四号の住民訴訟において、損害の発生は訴訟要件ではなく本案の要件とされているから、損害が発生しないことをもって当該住民訴訟が不適法とはいえない。

二  本案前の争点(二)について

地方自治法二四二条の二第一項四号の定める住民訴訟と同条第七項の定める普通地方公共団体に対し弁護士報酬の相当額を請求する訴訟は、論理上両立し、原告が被告双方に対し並立的に請求するものだから主観的予備的併合とはいえない。また当該住民訴訟での勝訴判決の確定は本案上の要件であり、訴訟要件とは解されないから、当該住民訴訟での勝訴判決が確定していないことにより、同項に基づく請求が不適法になるものではない。

三  本案上の争点(一)について

1  前記争いのない事実及び(〔証拠略〕)によれば、岡山市は、平成二年二月六日及び同年三月二八日に岡山県を通じ国から、衆議院議員選挙執行委託費として合計八三六六万七八五四円、最高裁判所裁判官国民審査委託費として合計二四万四七二八円の交付を受けたこと、右委託費の内訳は別紙のとおりであって選挙公報配布費は四六五万五七四〇円であること、被告井本は岡山市選挙管理委員会事務局局長として広告センターに対し本件選挙公報等の配布委託料として三九五万九三六六円を支出したこと、岡山市は右選挙の執行に関し国からの交付金を上回る一億五〇万四四五五円を支出したことが認められる。

2  そこで検討するに、地方自治法二四二条の二第一項四号による普通地方公共団体に代位して行う当該職員に対する損害賠償請求訴訟は、当該普通地方公共団体が当該職員に対して実体法上の損害賠償請求権を有していることを前提としている。そして、住民訴訟は普通地方公共団体の執行機関又は職員による財務会計上の違法、不当な行為が、究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害することからこれを防止するために特に法律によって創設された制度であるから、地方自治法二四二条第一項四号の損害とは、財務会計行為の性格やその財源の性格から、当該普通地方公共団体の固有財産に生じた損害であることを要する。

右観点から本件を検討するに、本件選挙等の執行費用は、公職選挙法二六三条、最高裁判所裁判官国民審査法五一条、地方財政法一〇条の四、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律二条、一八条によって国の負担とされている。これは当該事務の性格上は純然たる国の事務と考えられるものの、事務遂行の経済性、能率性の観点から、地方公共団体の機関に委任して執行しているものであるから、当該事務に要する経費は当然国が全額負担するとの理由に基づくものである。このことからすると、本件選挙等の執行費用の支出につき原告が主張するような損害が発生したとしても、その損害を被るのは国であって、岡山市の固有財産に損害が生じたといえないことは明らかである。

また本件においては、本件選挙等の執行のため岡山市が支出した費用は、岡山市が国から交付を受けた金額を超えており、岡山市が右不足額をその固有財産から支出したことは前記認定のとおりである。しかしながら、本件選挙等の執行経費は、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律二条が定める種目ごとに独立して詳細な基準によって算定されるものであり、また普通地方公共団体は国からの交付金の額を超えて国会議員の選挙等の事務を遂行する義務はなく、右交付金額を超えて当該普通地方公共団体の固有財産から支出してまで当該事務を遂行するか否かは、当該普通地方公共団体の裁量によるものであるから、本件選挙等の執行経費につき岡山市の固有財産からの支出があったことは、同法二条の定める種目ごとに国からの交付金を上回る支出があった種目の事務遂行上の問題であって、本件支出が選挙公報配布費として交付された四六三万九三一二円を上回らない以上、本件支出により岡山市の固有財産の損害は生じていないというべきである。

第四 結論

以上述べたとおり、岡山市に損害は生じていないから、これを前提とする原告の被告井本に対する請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないから棄却し、被告岡山市に対する請求は、被告井本に対する勝訴判決がなく理由がないから棄却する。

(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 吉波佳希 遠藤邦彦)

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